ETFと投資信託はどちらが高パフォーマンス?

S&P500等のインデックス(指数)に連動する積立を行う、いわゆるインデックス積立投資を行っている方が増えていると思います。日本でインデックス投資を行う場合は大きく分けて2種類の手法があります。ETF (Exchange Traded Fund)か投資信託です。どちらで積立投資をにするのか悩まれている方は多いと思います。例えばS&P500を例に取りますと、日本の代表的な証券会社である楽天証券やSBI証券では、ETFの取り扱いとしては、VOO、SPY、IVV等が購入できます。また、投資信託でS&P500に連動するものとしては、eMAXISSlim米国株式(S&P500)が人気です。

これから積立投資をする方はどちらを選択する方がパフォーマンスが優先するでしょうか。本記事では、実際に各指数に連動するETFと投資信託商品のパフォーマンスを比較してみます。

目次

本記事で採用している指数と対応するETF・投資信託

同一の指数に連動するETF商品が複数ある場合は、なるべく経費率が低いものを選択しています。

指数ETF投資信託
S&P500指数VOOeMAXIS Slim米国株式 (S&P500)
NASDAQナスダック 100指数QQQiFreeNEXT NASDAQ100インデックス
ロンドン金価格GLDMSMT ゴールドインデックス・オープン (為替ヘッジなし)
CRSP USトータルマーケット・インデックスVTI楽天・全米株式インデックス
MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスVT楽天・全世界株式インデックス・ファンド
FTSE ハイディビデンド・イールド・インデックスVYM楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド

投資信託とETFにかかる手数料や税金等について理解したい方は、以下の記事もご覧ください。

結論

先に結論を書きます。

  • VOO、VTI、VT、VYMでは一括投資、積立投資両方で、期間が10年と20年ではETFのパフォーマンスが優先します。期間が40年では投資信託のパフォーマンスが優先します。
  • QQQ、GLDMでは一括投資、積立投資両方で、全ての投資期間でETFパフォーマンスが優先します。

以下が結果早見表です.

※ EはETF、投は投資信託のパフォーマンスが優先することを表します。

ETFと投資信託のパフォーマンス影響

ETFと投資信託では株価上昇率や配当率は同等ですが、手数料や税金に違いがあります。他にも税金の

ETFと投資信託では以下のように経費率、為替手数料、入金手数料、税金、配当金(分配金)再投資の際の課税といった様々なパフォーマンスに影響を与える要素があります。

ETF投資信託
株価上昇率/年同等同等
配当率/年同等同等
経費率
配当金再投資配当金は一度投資家に支払われて再投資

(配当金には米国と日本で課税)

配当金は投資家に支払われず投資信託により自動的に再投資
(配当金には米国のみ課税)
為替手数料4銭/ドルなし
購入時手数料 (*1)0.495% (上限22ドル)なし
配当金税率 (国内)0.495% (上限22ドル)なし
配当金税率 (米国) (*2)20.315%なし
配当金税率 (米国) (*2)10%10%
売却時税金20.315% 20.315%
  • (*1) 楽天証券、SBI証券等では一部のETFは購入時手数料が無料
  • (*2) 確定申告の外国税控除により取り戻すことが可能

比較の前提

投資計画

  • 最初の初月の一括投資100万円と毎月10万円積立する積立投資の2パターン
  • 投資期間は10年間、20年間、40年間の3パターン
  • 配当金は再投資
  • 積立期間終了後、一括で売却

シミュレーション条件

  • 最低購入単位未満でも購入可能
  • 為替レート、配当率、株価上昇率は投資期間において固定
  • 配当率は月ベースに換算し、毎月配当金が発生

その他の条件

積立と配当金再投資

  • 投資信託およびETFは、最低購入金額の最低購入金額を無視して購入可能
  • 配当率は月当たりに換算し、毎月配当金が発生

売却

  • 積立期間満了後、全ての株および投資信託を一括で売却または解約
  • 海外ETF売却後は、全額をドルから円に転換

為替

  • 為替レートは投資期間中固定

配当率と騰落率

  • 騰落率は投資期間中固定
  • 配当率は投資期間中固定

配当金

  • ETF:配当金にかかった米国税は、確定申告の外国税控除で奪還
  • ETF:確定申告で取り戻した配当金の米国税は再投資しない
  • 投資信託:発生した配当金は米国内で課税後、自動的に再投資

各指数の株価上昇率

それぞれの指数に連動するETFの株価から、騰落率を計算します。期間はいずれも12年間です。

ベンチマークVOOQQQGLDMVTIVTVYM
2020年7月の株価
128.79
46.12
81.7164.6247.32
44.41

2020年7月の株価
317.05
258.39167.98
160.5677.38
78.80

これを元に年間あたりの騰落率を算出します。

ベンチマークVOOQQQGLDMVTIVTVYM
騰落率/年7.80%15.44%6.19%7.88%4.18%4.89%
配当率/年1.89%0.69%0.00%1.79%2.49%3.64%

また、各投資信託とETFの手数料もまとめます。投資信託については、利用可能な最新の運用報告書から確認出来た値を利用しています。

ベンチマークVOOQQQGLDMVTI
VTVYM
ファンド手数料率[年](ETF)0.030%0.200%0.180%0.030%0.080%0.060%
ファンド手数料率[年](投資信託)0.163%0.554%0.546%0.191%0.217%0.274%

GLDMは2018/6/25に上場しておりデータが不足しているため、代わりに同じ指数に連動しているGLDの株価を用いています。

比較結果のサマリー

まずは各指数ごとに、全ての積立投資期間、積立金額の組み合わせでトータルパフォーマンスの結果を確認してみましょう。

S&P500

S&P500では、一括投資、積立投資いずれのケースでも、投資期間が10年と20年のケースではETFのパフォーマンスが投資信託を優先します。しかし、投資期間が40年になると、一括投資、積立投資いずれのケースでも投資信託のパフォーマンスがETFを優先します。

 一括投資 100万円

10年20年40年
投資信託216.8%504.6%2963.10%
ETF219.0%507.5%2883.50%

積立投資 毎月10万円

10年20年40年
投資信託150.20%245.40%816.60%
ETF150.90%246.90%806.00%

NASDAQナスダック 100指数

NASDAQナスダック 100指数では、一括投資・積立に関わらず、全ての期間で、ETFの方がトータルパフォーマンスは優先します。

一括投資 100万円

10年20年40年
投資信託357.2%1444.6%25479.50%
ETF367.3%1525.7%28200.70%

積立投資 毎月10万円

10年20年40年
投資信託199.80%489.50%4447.80%
ETF202.60%507.80%4833.50%

ロンドン金価格

ロンドン金価格では、一括投資・積立に関わらず、全ての期間で、ETFの方がトータルパフォーマンスは優先します。

 一括投資 100万円

10年20年40年
投資信託157.9%257.9%728.40%
ETF162.3%274.7%836.80%

積立投資 毎月10万円

10年20年40年
投資信託126.60%165.20%308.60%
ETF128.00%170.60%336.50%

CRSP USトータルマーケット・インデックス

CRSP USトータルマーケット・インデックスでは、投資期間が10年と20年のケースではETFのパフォーマンスが投資信託を優先します。しかし、投資期間が40年になると、一括投資、積立投資いずれのケースでも投資信託のパフォーマンスがETFを優先します。

 一括投資 100万円

10年20年40年
投資信託215.9%500.5%2913.40%
ETF218.7%506.5%2878.50%

積立投資 毎月10万円

10年20年40年
投資信託149.90%244.10%806.50%
ETF150.70%246.50%804.50%

MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス

FTSE 全世界指数 (All-World)では、投資期間が10年と20年のケースではETFのパフォーマンスが投資信託を優先します。しかし、投資期間が40年になると、一括投資、積立投資いずれのケースでも投資信託のパフォーマンスがETFを優先します。

一括投資 100万円

10年20年40年
投資信託166.7%289.4%928.90%
ETF169.5%294.2%911.00%

積立投資 毎月10万円

10年20年40年
投資信託130.30%176.30%361.70%
ETF131.30%178.70%361.70%

FTSE ハイディビデンド・イールド・インデックス

FTSE ハイディビデンド・イールド・インデックスでは、投資期間が10年と20年のケースではETFのパフォーマンスが投資信託を優先します。しかし、投資期間が40年になると、一括投資、積立投資いずれのケースでも投資信託のパフォーマンスがETFを優先します。

一括投資 100万円

10年20年40年
投資信託192.5%392.5%1758.30%
ETF197.0%398.4%1674.50%

積立投資 毎月10万円

10年20年40年
投資信託140.80%210.70%560.00%
ETF142.60%214.30%551.10%

一括投資100万円 (投資期間20年の結果のみ掲載)

eMAXIS Slim 米国株式 (S&P500) vs VOO

iFreeNEXT NASDAQ100インデックス vs QQQ

SMT ゴールドインデックス・オープン (為替ヘッジなし) vs GLDM

楽天・全米株式インデックス vs VTI

楽天・全世界株式インデックス・ファンド vs VT

楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド vs VYM

積立投資 月10万円 (投資期間20年の結果のみ掲載)

eMAXIS Slim 米国株式 (S&P500) vs VOO

iFreeNEXT NASDAQ100インデックス vs QQQ

SMT ゴールドインデックス・オープン (為替ヘッジなし) vs GLDM

楽天・全米株式インデックス vs VTI

楽天・全世界株式インデックス・ファンド vs VT

楽天・米国高配当株式インデックス・ファンド vs VYM

比較結果に対する考え方

投資信託では、配当金に対しては米国税のみが課税されます。一方でETFでは配当金には米国税と国内税の2重課税が発生します。そのため、投資信託ではETFに比べて、配当金の再投資効率が高まるため、時価評価額の増加速度が高まります。

しかし売却時には,ETFでは、再投資された配当金は課税対象から控除されます。一方で、投資信託では、再投資された配当金は課税対象に含まれます。そのため、売却時の税金は投資信託の方が高くなる傾向にあります。

この配当金の国内課税繰延によるメリットとデメリットのバランスが、投資期間が20年程度までは投資信託にはデメリットがメリットを打ち消しますが、投資期間が40年になるとメリットがデメリットを打ち消すため、逆転現象が発生するわけです。

そして、この影響は配当率が高いほど影響が高まります。そのため、VOO、VTI、VT、VYMといった比較的配当率の高いETFでは投資期間が高まった際に投資信託に逆転されました。

しかし、QQQやGLDMといった、配当率が低い。または配当金が支払われないETFでは、この影響を受けづらいため、ファンド経費率の差が結果に大きく影響を与えました。

この国内課税の繰延に関するメリットとデメリットについては、以下のページで解説しています。

まとめ

本記事では、日本でも人気のインデックス指数に連動するETFと投資信託のパフォーマンスの比較を行いました。

配当金が大きいVOO、VTI、VT、VYMでは、投資期間が10年、20年ではETFのパフォーマンスが優先します。しかし40年になると投資信託のパフォーマンスが優先します。

配当金が比較的小さいQQQ、全く出ないGLDMでは、すべての期間でETFのパフォーマンスが優先します。

また、本ページで行った全ての検証結果に関わる計算は、次の記事で導出方法を紹介しています。よろしければこちらも合わせて御覧ください。

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