eMAXIS Slim 米国株式 S&P500のように、連動する指数が配当金を出す投資信託を保有している方の中には、配当金が本当に再投資されているか疑問が生じる方もいるのではないでしょうか。例えばeMAXIS Slim 米国株式 S&P500が連動する指数はS&P500です。2020年8月12日時点では、直近の配当率は1.89%となっています。しかし、eMAXIS Slimシリーズの運用報告書等を確認してもファンドの設立以来、分配金の実績はないと記載されています。配当金はどこにいってしまったのでしょうか。
この記事では投資信託の配当金が本当に再投資されているのかを、目論見書を通じて確認します。
結論
- eMAXIS Slim 米国株式 S&P500はS&P500指数(ネット(課税後)配当込み、円換算ベース)に連動している。
- eMAXIS Slim 米国株式 S&P500では、配当金は投資信託内で自動的に再投資されている。
- 再投資にあたっては米国税10%分が自動的に課税されている。
疑問:ファンド設立以来分配金実績がない?
まずこの記事の冒頭の疑問である、eMAXIS Slim 米国株式について分配金の実績を確認すると、ファンド設定以来分配金の実績がないことが分かります。
引用:eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | eMAXIS
しかし、連動する指数であるS&P500は以下のように配当金を出していることが分かります。
Date | Dividends (USD) |
---|---|
2020年06月19日 | 1.366 |
2020年03月20日 | 1.406 |
2019年12月20日 | 1.57 |
2019年09月20日 | 1.384 |
2019年06月21日 | 1.432 |
2019年03月15日 | 1.233 |
2018年12月21日 | 1.435 |
2018年09月21日 | 1.323 |
2018年06月15日 | 1.246 |
データ利用元:Yahoo Finance – Stock Market Live, Quotes, Business & Finance News
それではS&P500で得られるはずであった配当金はどこに行ってしまったのでしょうか?
目論見書の確認:eMAXIS Slim 米国株式 (S&P500)
S&P500指数では配当金の実績があるにも関わらず、何故eMAXIS Slim 米国株式 (S&P500)は配当金の実績が無いのでしょうか。これを明らかにするには目論見書を確認します。
目論見書には以下のように書かれています。
S&P500指数(配当込み、円換算ベース)の値動きに連動する投資成果をめざします。
MAXIS Slim 米国株式(S&P500)投資信託説明書(交付目論見書)使用開始日 2020.7.23
しかし、S&P500指数(配当込み、円換算ベース)とは何でしょうか。見たことの無い指数です。PDFの最後を見てみると、以下のようにあります。
S&P500指数(配当込み、円換算ベース)は、S&P500指数(配当込み)をもとに、委託会社が計算したものです。
MAXIS Slim 米国株式(S&P500)投資信託説明書(交付目論見書)使用開始日 2020.7.23
S&P500指数(配当込み、円換算ベース)はeMAXIS Slim の委託会社が計算している指数のようです。ところで、この指数は配当金の再投資の際の税金はどのように扱われているのでしょうか。
以下のeMAXIS Slimを運営している三菱UFJ国際投信株式会社から2019年4月18日に発表されている資料”ベンチマークの「配当込み指数」への変更について”の中にこの疑問に対する回答があります。
ベンチマークを「配当除く指数」から「配当込み指数」へ変更します。(ファンドによっては約款変更を伴いますが、重大な約款変更には該当しません。)また、本件変更に合わせて指数の表記を統一いたします。なお、海外株式・海外リート指数は、「ネット(課税後)配当込み指数」に平仄をそろえるための変更をいたします。(表記上は「ネット(課税後)」の記載は割愛いたします。)
三菱UFJ国際投信株式会社:ベンチマークの「配当込み指数」への変更について
従って、以下の2つは同じ意味と捉えて良いことが分かります。
- S&P500指数(配当込み、円換算ベース)
- S&P500指数(ネット(課税後)配当込み、円換算ベース)
目論見書の確認:野村インデックスファンド米国株式配当貴族
もう一つのSP500指数に連動する投資信託である、野村インデックスファンド米国株式配当貴族 の目論見書を確認してみます。
引用:野村インデックスファンド・ ⽶国株式配当貴族:投資信託説明書 (交付⽬論⾒書)使用開始日2020年7月16日
ファンドの設定以来、分配金の実績はありません。配当金は再投資に回されているのでしょうか?
S&P 500 配当貴族指数(配当込み・円換算ベース)の動きに連動する投資成果を⽬指して運
野村インデックスファンド・ ⽶国株式配当貴族:投資信託説明書 (交付⽬論⾒書)使用開始日2020年7月16日
⽤を⾏ないます。
同じ目論見書内に、上記の記述があります。従って、きちんと配当金についても再投資されていることが分かります。
おまけ:S&P 500 配当貴族指数
ところで、S&P 500 配当貴族指数(配当込み・円換算ベース)というのは初めて見る指数です。以下のようにありますので、S&P Dow Jonesによって定義されている指数のようです。
「S&P 500 Dividend Aristocrats Index」(S&P 500配当貴族指数)(「当インデックス」)はS&P Dow Jones Indices LLC(「SPDJI」)の商品であり、これを利用するライセンスが野村アセットマ
野村インデックスファンド・ ⽶国株式配当貴族:投資信託説明書 (交付⽬論⾒書)使用開始日2020年7月16日
ネジメント株式会社に付与されています。
S&P Dow Jonesの定義を確認してみます。S&P 500配当貴族指数 – S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス からS&P500 配当貴族指数メソドロジーがダウンロード出来ます。S&P500 配当貴族指数メソドロジーでは以下のように記載されています。
計算されるリターン・タイプ
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスでは、定期的な現金配当の取り扱いに基づいて複数のリターン・
タイプを計算します。定期的な現金配当の分類は S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスが判断します。S&P 500 配当貴族指数 メソドロジー
- 価格リターン(PR) バージョンは、定期的な現金配当の調整なしに計算されます。
- グロス・トータル・リターン(TR) バージョンは、源泉税を考慮せずに、配当の権利落日の取引
終了時点で定期的な現金配当を再投資します。- ネット・トータル・リターン(NTR) バージョンは、適用される源泉税を控除した後に、配当の権
利落日の取引終了時点で定期的な現金配当を再投資します。
S&P500 配当貴族指数には、配当金の扱いについて、3種類の定義があることが分かりました。野村インデックスファンド米国株式配当貴族 は配当込みと目論見書に明記されていました。従って、グロストータルリターンまたはネットトータルリターンであることは間違いないようです。けれども目論見書だけでは、果たしてどちらのリターンタイプへの連動を目指しているのかまでは分かりませんでした。
S&P500 配当貴族指数に連動する投資信託は他にもいくつかあり、それぞれ以下のように税引き後配当込みや課税後配当込みを明記しているものがありました。これらが同一のものかどうかまでは調べられていません。
投資信託名称 | 連動する指数名称 | 配当に対する税金の扱い |
---|---|---|
SMT 米国株配当貴族インデックス・オープン | S&P500配当貴族指数(税引後配当込み、円換算ベース) | 税引後配当 |
NEXT NOTES S&P500 配当貴族(ネットリターン) ETN | 円換算した「S&P500 配当貴族指数(課税後配当込み)」 | 税引後配当 |
野村インデックスファンド米国株式配当貴族 | S&P 500 配当貴族指数(配当込み・円換算ベース) | 確認出来ず |
引用:NEXT NOTES S&P500 配当貴族(ネットリターン) ETN | NEXT NOTES ウェブサイト
いずれにしても式配当貴族についても、配当金は再投資されていることに間違いはないようです。
まとめ
米国のインデックス指数に連動する投資信託の配当金が再投資されているのかを目論見書を読んで確認してみました。その結果以下の事が確認出来ました。
- eMAXIS Slim 米国株式 S&P500はS&P500指数(ネット(課税後)配当込み、円換算ベース)に連動している。
- eMAXIS Slim 米国株式 S&P500では、配当金はしっかりと自動的に再投資されている。
- 再投資にあたっては米国税10%分が自動的に課税されている。
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