皆さん、ご自身で保有の投資信託に保有時のコストについて正確に把握していますか?投資信託の保有時にかかるコストを正確に理解しましょう。
実質コスト = 信託報酬 + 隠れコスト
保有時のコストは、以下のように信託報酬と、その他の費用に分類されます。信託報酬は、投資信託の購入ページで表示されていることが多いです。しかし、隠れコストについては、購入ページには表示されていないことが多いです。そのため、保有時に実際にかかるコストについて正確に把握してない方も多いのではないでしょうか。
eMAXIX Slim 米国株式 (S&P500) を例に見てみます。投資信託の購入ページを見ますと、以下のように手数料と費用について記載があります。
- 買付手数料: なし
- ファンドの管理費用(含む信託報酬): 0.0968%
※楽天証券より引用
しかし、これだけでは信託報酬しか分かりません。その他費用はどれだけかかるのでしょうか。また信託報酬と隠れコストを合わせた実質コストはどれだけかかるのでしょうか。
尚、以下の記事では、投資信託にかかる保有コストも含めた全てのコスト構造を解説しています。
投資信託の実質コスト
投資信託の費用を確認します。eMAXIS Slim 米国株式 (S&P500)での例を見てみます。投資信託の目論見書を確認します。
目論見書からは以下のことが分かります。
投資信託の費用の種類 | 内訳 | コスト |
---|---|---|
保有時にかかるコスト | 信託報酬 | 年率0.0968% |
その他の費用 | その他の費用・手数料の項目はあるがコストの記載なし |
- 注文ページに記載のファンド管理費用0.0968%は信託報酬のみに該当
- その他の費用・手数料については目論見書にはコストは記載されていない
- 目論見書に記載のコストは、あくまで目論見。実際の費用は運用後にはじめて判明
保有時にかかるコストのうち、信託報酬を表に出ているコスト、その他の費用・手数料を隠れコストと呼ぶこともあります。
実際にかかる投資信託のコストはどの程度になるのでしょうか。それを確認するためには運用報告書を見ます。
投資信託の保有にかかるコストというのは、運用してみないと投信会社にも分かりません。そこで、目論見書では目安だけを書くことになります。実際に運用してかかった費用というのが運用報告書に記載されます。投資信託の実質コストはこちらを参考するのが良いでしょう。
eMAXIS Slim 米国株式 (S&P500)の目論見書と運用書それぞれをベースにした保有時のコストは以下のようにまとめられます。
費用 | 目論見書ベース(年率) | 運用報告書ベース(年率) | |
---|---|---|---|
信託報酬 | 0.0968% | 0.119% | |
その他の費用 | 売買委託手数料 | 目論見書には記載なし | 0.012% |
有価証券取引税 | 0.000% | ||
その他費用 | 0.032% | ||
その他の費用合計 | 目論見書には記載なし | 0.044% | |
実質コスト 0.163% | 0.0968% | 実質コスト 0.163% |
- 信託報酬は目論見書ベースと、運用報告書ベースで変化
- 実質コストは、運用報告書ベースで確認可能
運用報告書で確認した保有時の実質コストをまとめると以下のようになります。こちらが実際にかかっている保有時のコストとして理解するのが良いでしょう。
実質コストと信託報酬のみとのパフォーマンスの比較
月5万円で、20年運用した場合を、目論見書ベースと運用報告書ベースで比較してみます。
基準 | 配当+株価上昇率 (年率) | 保有コスト(年率) | 実質利回り(年率) | 最終時価総額(円) |
---|---|---|---|---|
信託報酬のみ | 8.81% | 0.0968% | 8.7132% | 32,203,215 |
実質コスト | 8.81% | 0.1630% | 8.6470% | 31,935,386 |
※配当+株価上昇率はmorningstar.comよりSPYの15年Trailing Returns (Day End)を参考。7/30時点
※最終時価総額は以下のサイトで算出 楽天証券積立簡単シミュレーション
最終時価総額では、運用報告書ベース(実質コスト)の方が267,829円低い結果になりました。これが隠れコストによってかかっている金額になります。
まとめ
投資信託にかかる隠れコストを明らかにし、実質コストを確認しました。また、eMAXIS Slim 米国株式 (S&P500)での積立のシュミレーションによる実質コストと信託報酬の差も確認しました。長期積立投資の際には、かかるコスト構造をしっかりと理解し、自身の投資商品にかかるコストをしっかりと理解することが大切です。
投資信託にかかるコストとトータルパフォーマンスについては、以下でも解説しています。こちらも御覧ください。