投資信託の配当金は再投資されているのか?基準価額のシミュレーションで確認

連動する指数が配当金を出す投資信託を保有している方の中には、配当金が本当に再投資されているか疑問が生じる方もいるのではないでしょうか。eMAXIS Slim 米国株式 S&P500が連動する指数はS&P500です。2020年8月12日時点では、直近の配当率は1.89%となっています。しかし、eMAXIS Slimシリーズの運用報告書等を確認してもファンドの設立以来、分配金の実績はないと記載されています。配当金はどこにいってしまったのでしょうか。

この記事では投資信託の配当金の行方を確認するために、実際に基準価額の値動きから配当金を含んだパフォーマンスになっていることを確認します。

目次

結論

  • eMAXIS Slim 米国株式 S&P500の基準価額の推移は、配当金込のパフォーマンスとかなり近い。従って、配当込みと考えて問題ない。

疑問

こちらの記事でも調べていますが、eMAXIS Slim 米国株式 S&P500はファンド設立以来分配金を一度も出したことがありません。しかし、連動する指数であるS&P500指数は配当金を直近の実績で年率1.89%程度で出しています。この配当金はどこに行ってしまったのでしょうか?

過去の実績データによる検証

eMAXIS Slim 米国株式 (S&P500)の基準価額をS&P500指数と比較します。eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | eMAXISから、eMAXIS Slim 米国株式 (S&P500)基準価額の設定来データをCSV形式でダウンロード出来ます。

また、Yahoo! Financeから、S&P500指数と配当実績、円ドルの為替レートの日次データをダウンロード出来ます。これらを使うことで、実績で比較することが出来そうです。

  • 検証の対象
    • eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の基準価額
  • 検証に使うデータ
    • S&P500指数の株価データ
    • 配当金の実績データ
    • 為替レート

基準価額の算出にあたっては、以下の考え方を利用します。

  • 海外の資産 → 基準価額を算出する前営業日の各海外市場の終値
  • 為替 → 基準価額を算出する当日の午前10時頃の為替レート *
    *為替相場が大きく変動した場合は、適用為替レートを変更する場合があります。

引用:日興AMファンドアカデミー 基準価額の算出方法 (いつの価格が基準価額に反映されるのか?)

それでは検証してみましょう。eMAXIS Slim 米国株式 (S&P500)基準価額の変化は以下の通りです。

基準日基準価額(円)
2018/7/310,038
2020/8/712,108

連動する指数である、S&P500指数(SPY)は以下の通りです。基準価額は前日の指数の終値を元に計算されるため、基準価額算出基準日の前日のデータを使います。

DateClose
2018/7/2271.86
2020/8/6334.33

次に為替レートです。基準価額の算出には当日の午前10:00頃の値を用いるとありますので、時差も考慮し、前日の終値を使うことにします。

  • 日本/東京の2018年07月03日(火) 10:00 はアメリカ/ニューヨーク夏時間 の2018年07月02日(月) 21:00
  • 日本/東京の2018年08月07日(火) 10:00 はアメリカ/ニューヨーク夏時間 の2018年08月06日(月) 21:00

データ利用元:日本/東京とアメリカ/ニューヨークの時差を計算

最初と最後の基準日の前日の為替レートは以下です。

DateClose (USD)
2018/7/2110.710
2020/8/6105.553

S&P500指数による配当実績と為替レートを使うことで、配当金実績は以下のように計算できます。

尚、配当金の正確な計算方法は分からなかったため、ここでは配当金支払日と当日の為替レートを用いることにしました。ここまでのデータまとめて計算し、比較してみます。

eMAXIS Slim 米国株式 (S&P500)の基準価額のパフォーマンス 20.6%をS&P500指数のパフォーマンスと比較すると、S&P500指数を元に計算したパフォーマンスでは、配当含まずの17.3%からは3.3%も劣後するため、何かしら配当を含むことは間違いなさそうです。しかし配当含む(課税前)ですと、21.3%となるため、配当金には課税が含まれていると捉えて間違いなさそうです。尚、投資信託では配当金には、米国税率である10%が課税後に再投資されますので、S&P指数、配当実績、為替レートから計算した20.9%が比較すべき値となります。これは、基準価額の上昇率である20.6%と比べると0.3%程度の誤差となり、データから見ても、きちんと配当金には米国で課税され再投資していることが確認できました。

まとめ

米国のインデックス指数に連動する投資信託の配当金が再投資されているのかを過去データの検証から確認してみました。その結果以下の事が確認出来ました。

  • eMAXIS Slim 米国株式 S&P500は配当金(米国課税後)と比較してもほぼ同等のパフォーマンスであり、配当金は自動的に再投資されていると考えて間違いない。

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